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瀬織津姫神

武蔵国造の信仰-人見稲荷神社

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人見稲荷神社(東京都府中市若松町)の紹介です。

『日本書紀』神代上では「天穂日命〔此出雲臣・武蔵国造・土師連等が遠祖なり〕」と記されている。出雲臣と武蔵国造及び土師連等は、ホヒノミコトを遠祖としており、同族と考えられる。

以下は、本年一月に発売された菊池展明『出雲の国の女神』風琳堂から、引用する。

 <ホヒノミコトの末裔には出雲国造(出雲臣)以外にも多くの同族がいた。たとえば武蔵国造(无邪志国造)は、氷上神社の祭祀者としてよく知られる。
『武蔵国一宮氷川神社書』の一つ「武蔵国造系図」では、天穂日命の子には天夷鳥命・伊努比売命の兄妹二神があり、天夷鳥命には伊佐我[いさわ]命・出雲建子命の兄弟があったとされ、この伊佐我命の末裔を出雲国造、出雲建子命の末裔を武蔵国造としている(原武史『〈出雲〉という思想』講談社学術文庫)。
 武蔵国造に連なる「出雲建子命」だが、この名は『伊勢国風土記』逸文に「出雲の神の子、出雲建子命、またの名は伊勢津彦の神、またの名は天の櫛玉命である」とあり、同逸文によれば、神武天皇の命によってやってきた天日別命に対して、伊勢の「国譲り」をして信濃国へ去った神とされる。つまり、伊勢国の地主神であったわけで、伊勢の祭祀の基層には出雲神の祭祀がかつてあったことが暗に告げられている。
武蔵国造ゆかりの人見稲荷神社(府中市)境内の石碑を読んでみる(適宜句読点を補足)。

  御祭神は倉稲魂命、天下春命、瀬織津比咩命三柱にして、武蔵国造兄武比命の祀られし社なりと伝ふ。
 昭和五十六年十一月三日未明、不慮の出火に依り焼失、氏子中恐懼協力し再建す。

  石碑には、多くの再建奉仕者の名も刻まれていて、この社を崇敬する氏子衆の篤信がよく伝わってくる。石碑は、この神社は「武蔵国造兄武比命の祀られし社」で、祭神の一神に「瀬織津比咩命」の名を刻んでいる。「武蔵国造兄武比命」の「兄武比命」は「出雲臣の祖」とされる「兄多毛比命」のことである。
 出雲国造の同族が、武蔵国で瀬織津姫神を奉斎していたというのは、出雲国の祭祀を考えるとき、示唆することすこぶる大きいといわざるをえまい。>

▼人見稲荷神社(東京都府中市) 
人見稲荷神社鳥居

人見稲荷神社拝殿

人見稲荷神社2

人見


人見稲荷神社に参詣する途中で人見(ひとみ)の地名について書いた石標があった。石標には、古く人見の集落は、街道筋ではなく浅間山(東京都府中市)の麓にあったと伝えられている。
新編武蔵風土記稿によれば、民家五十八軒府中路(人見街道)の往来に並居す」とあり、地名の起こりは、武蔵七党の人見一族が来住していたという説がある。あるいは、浅間山(人見山)が遠くを見たり、遠くからも望める格好の場所であることから起こった地名かもしれないとある。境内には、浅間神社の遥拝所があった。人見一族の浅間信仰が窺える。
▼浅間神社遥拝所
遥拝所

中世、武蔵国一之宮は、小野神社であったと伝わる。多摩市の小野神社には、天ノ春下命・瀬織津姫神が祀られている。小野神社は、当初は、瀬織津姫神のみの祭祀だったという説もある。八三八年、隠岐に配流された小野篁(たかむら)が祈ったのが、瀬織津姫神を祀る壇鏡の滝である。
壇鏡の滝(本殿背後))

 人見稲荷神社の由緒が語るように出雲族が武蔵国造になり、瀬織津比咩命を祀ったことが確認できるものの出雲の地では、瀬織津姫神は、神社の境内社等に神名が見受けられるが、神徳が語られることはない。
 『出雲の国の女神』は、風土記以前の出雲の元初信仰を深く読み解き考察をしている。その一つが、武蔵国造の祀る神の信仰であった。
 
 東京都千代田区の神田神社(神田明神)は、大己貴神・少彦名命・平将門命を祀る。社伝によると、天平二年(730)に出雲氏族で大己貴神の後裔・真神田臣により、武蔵国豊島郡芝崎村(現在の東京都千代田区大手町将軍塚周辺)に創建された。その後、天慶の乱で活躍された平将門公が没するに及び所縁の者たちにより将軍塚が築かれ、さらに延慶二年(1309)に神田明神の祭神として奉祀された(『社寺縁起辞典』より引用)。
以上のように神田明神も出雲氏族の後裔真神田臣による創建と伝承されている。神田明神に瀬織津姫神の祭祀は確認できないが、平将門公が瀬織津姫神を祭祀したという石碑が茨木県板東市長谷の長谷香取神社の境内にある。石碑は、瀬織津比鳴神社と記している。比鳴とあるが、瀬織津比咩と考える。愛媛県八幡浜市の松柏神社では瀬織津姫はたしかに鳴滝の神でもあった。

▼境内の石碑(千葉県在住S氏撮影)
平将門公祭祀

平将門公祭祀2

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