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出雲の神

出雲ー国引き神話

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『出雲国風土記』で国引き神話の伝わる「伯耆(ははき)の国にある火神岳」が、大山(だいせん)で、「夜見(よみ)の嶋」とあるのが弓ヶ浜半島である。夜見から黄泉の島ともいわれるようになる。「河船のもそろもそろとすすむごとく国来(くにこ)、国来(くにこ)」と引いて来て国を縫い合わせるという神話からは、他の風土記にないおおらかさが伝わってくる。
国引き神話は、国外にも見受けられる。ニュージーランドの神話には、「英雄マウイが陸地を釣針で魚のように釣り上げた」というものや、ポリネシアのマルケサス島には、「太初に海だけあり、その上を、チキという神がカヌーで浮かびながら、太洋の底から地を釣りあげた」という創世神話が語られている(伊藤清司「蓬莱島説話と国引き神話」大林太良編『日本神話の比較研究』法政大学出版局)。
▼伯耆大山(火神岳)
伯耆大山
▼三瓶山(佐比賣山)
三瓶山

『出雲国風土記』意宇郡の国引き神話を読んでみる。

意宇(おう)と號(なづ)くる所以(ゆえ)は、国引きましし八束水臣津野命(やつかみづおみつののみこと)、
詔(の)りたまひしく、「八雲立つ出雲の国は、狭布(さの)の稚国(わかくに)なるかも。初国(はつくに)小さく作らせり。
故(かれ)、作り縫(ぬ)はな」と詔(の)りたまひて、「栲衾(たくぶすま)、志羅紀(しらぎ)の三埼を、

国の餘(あまり)あるやと見れば、国の餘(あまり)あり」と詔(の)りたまひて、童女(おとめ)の胸鉏(むなすき)取らして、大魚(おふを)のきだ衝(つ)き別けて、はたすすき穂振り別けて、三身(みつみ)の綱(つな)うち挂(か)けて、霜黒葛(しもつづら)くるやくるやに、河船のもそろもそろに、国来(くにこ)々々と引き来縫(きぬ)へる国は、

去豆(こづ)の折絶(おりたえ)より、八穂爾支豆支(やほにきづき)の御埼(みさき)なり。此(か)くて、堅(かた)め立てし加志(かし)は、石見(いはみ)の国と出雲の国との堺なる、名は佐比賣山(さひめやま)、是なり、亦、持ち引ける綱は、薗(その)の長濱(ながはま)、是なり。亦、「北門(きたど)の佐伎(さき)の国を、

国の餘(あまり)ありやと見れば、国の餘りあり」と詔りまたひて、童女(おとめ)の胸鉏(むなすき)取らして、大魚(おふを)のきだ衝(つ)き別けて、はたすすき穂振り別けて、三身(みつみ)の綱うち挂(か)けて、霜黒葛(しもつづら)くるやくるやに、河船のもそろもそろに、国来(くにこ)々々と引き来縫(きぬ)へる国は、

多久(たく)の折絶(おりたえ)より、狭田(さだ)の国、是なり。亦、「北門(きたど)の農波(ぬなみ)の国を、

国の餘(あまり)ありやと見れば、国の餘(あまり)あり」と詔(の)りたまひて、童女(おとめ)の胸鉏(むなすき)取らして、大魚(おふを)のきだ衝(つ)き別けて、はたすすき穂振り別けて、三身(みつみ)の綱うち挂(か)けて、霜黒葛(しもつづら)くるやくるやに、河船のもそろもそろに、国来(くにこ)々々と引き来縫(きぬ)へる国は、

宇波(たしみ)の折絶(おりたえ)より、闇見(くらみ)の国、是なり。亦、「高志(こし)の都都(つつ)の三埼(みさき)を、

国の餘(あまり)ありやと見れば、国の餘(あまり)あり」と詔りまたひて、童女(おとめ)の胸鉏(むなすき)取らして、大魚(おふを)のきだ衝(つ)き別けて、はたすすき穂振り別けて、三身(みつみ)の綱うち挂(か)けて、霜黒葛(しもつづら)くるやくるやに、河船のもそろもそろに、国来(くにこ)々々と引き来縫(きぬ)へる国は、

三穂(みほ)の埼なり。持ち引ける綱は、夜見(よみ)の嶋なり。賢(かた)め立てし加志は、伯耆(ははき)の国なる火神岳(ひのかみだけ)、是なり。「今は、国は引き訖(を)へつ」と詔りまたひて、意宇(おう)の社(もり)に御杖(みつえ)衝き立てて、「おゑ」と詔(の)りたまひき。故(かれ)、意宇(おう)といふ。謂はゆる意宇の杜は、郡家(こほりのみやけ)の東北(うしとら)の邊(ほとり)、田の中にある塾(こやま)、是なり。

国引き神話は、新羅・隠岐の国・能登半島などから、国の餘(あまり)ありやと見れば・・・と同じ言葉で4回繰り返して国を引く神話である。民謡のお囃子のように何度も何度も語られる言葉(ことのは)は、ある一定のリズムを持っている。遠い昔、神話の語り部によってこの言葉に節をつけて歌った人たちがいたのかもしれないと風土記を読みながら、古代に思いを馳せている。

▼マリンプラザ島根ジオパークの説明板・折絶の図
折絶の図

「意宇杜」の石碑が松江市の阿太加夜神社の境内にある。風土記以前は、出雲(いずも)は、「あだか」と呼ばれていた。
『出雲の国の女神』で考察している「あだか」の神が「阿陀加夜怒志多伎吉比売命(あだかやぬしたききひめのみこと)」である。

▼阿太加夜神社
阿太加夜神社

意宇社

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