円空
錦岡樽前神社―円空仏
錦岡樽前神社(苫小牧市宮前町3丁目6-20)の紹介です。
樽前山の麓にある錦岡樽前神社は、円空仏を本尊として祀る稀有な神社です。
▼錦岡樽前神社 背景に見えるのが樽前山

円空仏は氏子の方々によって大切に祀られています。
▼円空仏案内板

▼円空仏

『円空と瀬織津姫』上巻/菊池展明著から引用。
明治の神仏分離に伴って、この地方の神社(神体)調べをおこなったのは、札幌神社(のちの北海道神宮)権宮司兼開拓使・菊池重賢だった。彼は『明治五年壬申八月・十月巡回記』の樽前神社の項を、次のように記していた。
樽前神社 木造 仏体 改祭
観音裏ニたるまゑのたけトアリ年号訳兼
祭神瀬織津姫ト申伝有之候由ノ処、従前当社ハ樽前山神ヲ祭ル趣、瀬織津姫ハ海神祓戸神ニテ山海ノ相違、改祭ノ上ハ祭神判然取調可伺事。
勇払 白老 千歳三郡産土神ト奉斎シテ郷社ト被為成度段出願有之。
(中略) 同所漁場出張番家守護神
樽前神社の氏子衆は菊池に対して、「祭神瀬織津姫ト申伝有之候」、またはこの神は「勇払白老千歳三郡産土神」であり「漁場出張番家守護神」であると主張したのである。菊池は、樽前神社は「樽前山神」をまつるもので、「瀬織津姫ハ海神祓戸神ニテ山海ノ相違、改祭ノ上ハ祭神判然取調可伺事」と記している。瀬織津姫を「祓戸神」という性格ばかりではなく「海神」(宗像神)とも認めていたのは、やはり札幌神社の神官ゆえの見識であったが、その海神を山神としてまつるのはおかしいというのが菊池の『巡回日記』に記された主張だった。海神が山神としてまつられるのは阿寒大神ばかりでなく、、全国に諸例多く、むしろ自然のことだが、菊池は「山海ノ相違」云々と、神官にあるまじき不見識をもっていた。
明治五年の氏子衆の祭神・瀬織津姫という主張は通ることなく、樽前神社は苫小牧市部に遷座し、祭神も「皇朝ノ神祗」にのっとって変更された。この新・樽前神社は樽前山神社となり、現在、壮大な社殿のもとに新たな祭祀がおこなわれている。しかし、同社の「由緒」には、明治五年後の祭神変更・決定のいきさつがさりげなく書かれている。
▼苫小牧 樽前山神社

▼由緒案内板

錦岡樽前神社の氏子の方々にお聞きしても瀬織津姫神がご祭神として祀られていたことを知る方がいないのが現状です。
「とまこまいの石碑」高橋稔著には、同社祭神を天照皇大神・大己貴命・少彦命・埴山姫神・倉稲神と刻まれていると書かれています。同書には円空仏で知られる錦岡樽前神社の由来についてはほとんどが不明であるとし、言い伝えによると覚生川中流に祀られていたが、イワシ漁場が繁栄した明治二十年代に人口が増えた覚生に移され、明治三十七年に再び樽前に移設されたとあります。
『苫小牧市史』上巻には、市川十郎筆記として円空作の樽前権現は火山による災害を払うための鎮守としたものであろうと述べています。この祓いの神徳と明治期の氏子の方々の祀る瀬織津姫神のご神名が語られるとき、円空が瀬織津姫という神を樽前山神として感得し、「たろまゑのたけ権現」の観音像を彫ったのではないかと思えてきます。同書には松浦武四郎の『東蝦夷日誌』の中で樽前権現のほかにユウウツ川東に沼有、此の島に弁財天社ありて円空作の地蔵尊を安置す。「風を祈り又海上難風の時祈誓して頗る験有りと聞り。」と書かれたものを紹介しています。円空は自ら「江州伊吹山平等岩僧円空」と名乗っていました。琵琶湖を見下ろす伊吹山に円空は特大の十一面観音(像高180.5センチ)と不動尊(像高99.7センチ)の二体を彫っています。
『円空と瀬織津姫』下巻菊池展明著に円空が伊吹山の神を思って詠んだ歌を紹介しています。
伊福山法ノ泉の湧出る水汲玉ノ神かとぞ思ふ
(伊福山〔伊吹山〕法(のり)の泉の湧き出(いづ)る水汲む玉の神かとぞ思ふ)
同書には
円空は、伊福山=伊吹山には「法ノ泉」が湧出していて、ここには、その霊水を汲む最上の神(「玉の神」)がいると詠っている。円空にとって、仏法の霊泉をを司る神、あるいは霊泉そのものである「水汲玉ノ神」がいるのが伊吹山で、この山神(水神)は十一面観音に化身する神だというのが彼の認識である。
▼樽前山と支笏湖

苫小牧市立図書館で樽前山や支笏湖の民話を探しましたが、見当たりませんでした。アイヌの方々の伝承が拾えるといいのですが・・・。円空は蝦夷地に二年間滞在(寛文五年より寛文六年と伝えられる)して仏像を彫ったと伝えられています。円空34歳のときでした。
錦岡樽前神社例大祭が六月十八日に行われます。この日は円空仏がご開帳されます。
樽前山の麓にある錦岡樽前神社は、円空仏を本尊として祀る稀有な神社です。
▼錦岡樽前神社 背景に見えるのが樽前山

円空仏は氏子の方々によって大切に祀られています。
▼円空仏案内板

▼円空仏

『円空と瀬織津姫』上巻/菊池展明著から引用。
明治の神仏分離に伴って、この地方の神社(神体)調べをおこなったのは、札幌神社(のちの北海道神宮)権宮司兼開拓使・菊池重賢だった。彼は『明治五年壬申八月・十月巡回記』の樽前神社の項を、次のように記していた。
樽前神社 木造 仏体 改祭
観音裏ニたるまゑのたけトアリ年号訳兼
祭神瀬織津姫ト申伝有之候由ノ処、従前当社ハ樽前山神ヲ祭ル趣、瀬織津姫ハ海神祓戸神ニテ山海ノ相違、改祭ノ上ハ祭神判然取調可伺事。
勇払 白老 千歳三郡産土神ト奉斎シテ郷社ト被為成度段出願有之。
(中略) 同所漁場出張番家守護神
樽前神社の氏子衆は菊池に対して、「祭神瀬織津姫ト申伝有之候」、またはこの神は「勇払白老千歳三郡産土神」であり「漁場出張番家守護神」であると主張したのである。菊池は、樽前神社は「樽前山神」をまつるもので、「瀬織津姫ハ海神祓戸神ニテ山海ノ相違、改祭ノ上ハ祭神判然取調可伺事」と記している。瀬織津姫を「祓戸神」という性格ばかりではなく「海神」(宗像神)とも認めていたのは、やはり札幌神社の神官ゆえの見識であったが、その海神を山神としてまつるのはおかしいというのが菊池の『巡回日記』に記された主張だった。海神が山神としてまつられるのは阿寒大神ばかりでなく、、全国に諸例多く、むしろ自然のことだが、菊池は「山海ノ相違」云々と、神官にあるまじき不見識をもっていた。
明治五年の氏子衆の祭神・瀬織津姫という主張は通ることなく、樽前神社は苫小牧市部に遷座し、祭神も「皇朝ノ神祗」にのっとって変更された。この新・樽前神社は樽前山神社となり、現在、壮大な社殿のもとに新たな祭祀がおこなわれている。しかし、同社の「由緒」には、明治五年後の祭神変更・決定のいきさつがさりげなく書かれている。
▼苫小牧 樽前山神社

▼由緒案内板

錦岡樽前神社の氏子の方々にお聞きしても瀬織津姫神がご祭神として祀られていたことを知る方がいないのが現状です。
「とまこまいの石碑」高橋稔著には、同社祭神を天照皇大神・大己貴命・少彦命・埴山姫神・倉稲神と刻まれていると書かれています。同書には円空仏で知られる錦岡樽前神社の由来についてはほとんどが不明であるとし、言い伝えによると覚生川中流に祀られていたが、イワシ漁場が繁栄した明治二十年代に人口が増えた覚生に移され、明治三十七年に再び樽前に移設されたとあります。
『苫小牧市史』上巻には、市川十郎筆記として円空作の樽前権現は火山による災害を払うための鎮守としたものであろうと述べています。この祓いの神徳と明治期の氏子の方々の祀る瀬織津姫神のご神名が語られるとき、円空が瀬織津姫という神を樽前山神として感得し、「たろまゑのたけ権現」の観音像を彫ったのではないかと思えてきます。同書には松浦武四郎の『東蝦夷日誌』の中で樽前権現のほかにユウウツ川東に沼有、此の島に弁財天社ありて円空作の地蔵尊を安置す。「風を祈り又海上難風の時祈誓して頗る験有りと聞り。」と書かれたものを紹介しています。円空は自ら「江州伊吹山平等岩僧円空」と名乗っていました。琵琶湖を見下ろす伊吹山に円空は特大の十一面観音(像高180.5センチ)と不動尊(像高99.7センチ)の二体を彫っています。
『円空と瀬織津姫』下巻菊池展明著に円空が伊吹山の神を思って詠んだ歌を紹介しています。
伊福山法ノ泉の湧出る水汲玉ノ神かとぞ思ふ
(伊福山〔伊吹山〕法(のり)の泉の湧き出(いづ)る水汲む玉の神かとぞ思ふ)
同書には
円空は、伊福山=伊吹山には「法ノ泉」が湧出していて、ここには、その霊水を汲む最上の神(「玉の神」)がいると詠っている。円空にとって、仏法の霊泉をを司る神、あるいは霊泉そのものである「水汲玉ノ神」がいるのが伊吹山で、この山神(水神)は十一面観音に化身する神だというのが彼の認識である。
▼樽前山と支笏湖

苫小牧市立図書館で樽前山や支笏湖の民話を探しましたが、見当たりませんでした。アイヌの方々の伝承が拾えるといいのですが・・・。円空は蝦夷地に二年間滞在(寛文五年より寛文六年と伝えられる)して仏像を彫ったと伝えられています。円空34歳のときでした。
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- 円空仏:三井寺
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