瀬織津姫神

遠州桜ヶ池と池宮神社・皇円伝承

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静岡県御前崎市佐倉の池宮神社と阿闍梨皇円上人の伝承の紹介です。

桜ヶ池池宮神社略記の「桜ヶ池」より読んでみます。
御前崎半島県立自然公園の一環にあり、静岡県自然の森百選に選ばれた神秘な原生林に三方を囲まれ、数々の伝説を秘めた桜ヶ池は、約二万年前に出来た砂丘堰止湖で、広さ役二万平方メートル。往古よりこのかた満々と水を湛えた県指定名勝地で、万葉集にも歌われた名池である。この桜ヶ池に平安末期比叡山の名僧皇円阿闍梨が衆生救済のため、龍蛇と化し、弥勒菩薩の出現を待って入定され、池の主神となられた。

▼池宮神社
池宮神社鳥居
▼池宮神社由緒
池宮神社由緒
▼拝殿
池宮神社拝殿

池宮神社
御祭神 瀬織津比詳【ママ】命 
(相殿)事代主命 建御名方命
御神徳 大祓詞に現われる、代表的な清め祓いの神で諸々の罪穢れを祓い、開運厄除の御神徳極めて高い。事代主命・建御名方命は共に大国主命の御子神で、事代主命は通称エビス様と称せられ商売繁昌、福の神として、又、建御名方命は農、耕、水の守護神として崇められている。
御由来 創祀は敏達天皇十三年六月(584年)に瀬織津比詳命がご出現、社殿の造営がなされた。後、栄枯盛衰が激しく平安時代初めには衰退し、社殿は大破した。しかし、平安時代中期一条天皇の長保三年(1001年)社家の遠祖源朝臣信栄が社勢を再興した。(後略)

瀬織津姫神の研究者であった菊池展明氏は、『円空と瀬織津姫』の下巻で円空の入定(長良川河畔)が弥勒信仰によるものとし、円空がある「神」をおもい、弥勒下生のときを待つという発想をしたのは、円空が最初ではなかったとし、阿闍梨皇円の入定について触れていました。
皇円

以下は『円空と瀬織津姫』から引用します。
同書は熊本県玉名市の蓮華院誕生寺(真言律宗)に触れています。
蓮華院誕生寺は治承元年(1177)、平重盛によって創建された古刹で戦乱の荒廃の後、昭和五年、霊告があり是信僧正によって再興されました。この「霊告」の内容は、「我は今より七百六十年前、遠州(静岡県)桜ヶ池に菩薩業の為に龍身入定せし皇円なり。今心眼を成就せるをもって汝にその功徳を授く。よって今より蓮華院を再興し衆生済度に当れというものだった。」皇円は一条天皇の関白を務めた藤原道兼の末裔で「扶桑略記」を結実したと伝えられています。皇円は、嘉応元年(1169)6月13日、96歳で他界するというのが定説だが、皇円伝説では、この日、「突然、比叡の雄山に黒雲が迫り龍巻がおきました。風がやみ黒雲が散ったときその時、皇円上人は昂然と消えていたというものです。皇円はどこへ往ったかについては、遠州の桜ヶ池に往き、「龍身入定」したとされています。弟子たちは「龍身を受けて修行するのにふさわしい池を探せ」という皇円の願いに各地を探し、弟子の中で著名な浄土宗の開祖「法然」は観世音菩薩から「桜ヶ池を訪(とぶら)え」というお告げを受けたことが語られています。法然は「桜ヶ池の霊水」を比叡山に持ち帰り皇円に捧げると、皇円は大いに喜んだと伝えられています。なぜ、桜ヶ池の霊水を熊本県玉名市を生誕とする皇円が喜んだのか・・・
著者の菊池氏は、そこが江戸時代まで「池宮天王社」といわれ、奥宮的境内社に「桜之宮」があったからだはないかと書いています。同書には『三国地志』には「桜宮」は亦五十鈴宮朝日宮伊勢宮桜宮ト云ウ」と江戸期まで、神宮(天照皇大神宮)の異称に「桜宮」がありました。
現在、池宮神社の主祭神は、瀬織津比咩神で神社の説明では清め祓いの神とあり、大祓いの神としての認識しか、読み取れません。ただ、私が注目したのは、比叡山近くの滋賀県瀬田川の佐久奈度神社で中臣氏によって大祓祝詞の神として祀られる前に池宮神社の社伝では敏達天皇十三年(584)に瀬織津比咩神という神の出現があったということです。
琵琶湖畔では、458年の雄略天皇の時代まで瀬織津比咩神の祭祀の確認が出来ます。素人の調べですのでどの時期まで瀬織津比咩神という神の祭祀を遡れるのかが分かりませんが探索を続けたいと思っています。瀬織津比咩神は各地の神社伝承では、天照大神荒御魂(撞賢木厳之御魂天疎向津媛命)・八十枉津日神・大綾津日神等で確認されますが、「エミシの国の女神」には伊雑宮の御師の家のひとつに伝わる「西岡家文書」によると、伊雑宮の祭神として登場していた「玉柱屋姫命」は瀬織津姫と同神であると書かれています。複雑な異称祭祀を考える旅ですが、式内社からの分祀で勧請された神に瀬織津比咩神という新たな祭祀を見つけるともっと菊池氏に生きて書いてほしかったという想いが過ります。
桜ヶ池の皇円の碑を前にして「扶桑略記」のなかでは「天神地祗皆助歟」とあり、異称祭祀を含め、この神の名に触れていない皇円上人の心底を覗いてみたい衝動にかられました。「日本書紀」の神功皇后の条には撞賢木厳之御魂天疎向津媛命というご神名が記載されています。(詳しくは「エミシの国の女神」「円空と瀬織津姫」「八幡比咩神とは何か」参照)。
「扶桑略記」には八幡大神の神託に触れている箇所があるのになぜ、神功皇后の祈ったであろう神に触れていないのは何故なのか?龍神となって末法の衆生を救うという大願で池中入定した皇円上人に桜ヶ池の神は、どのように映っていたのでしょうか?
 桜ヶ池伝説の図

「桜ヶ池の伝説」社務所発行では、皇円上人が往って六年ほどして弟子の法然が桜ヶ池の水際に立ちます。法然はもう一度師の尊顔を拝したいと願うと一筋の叢雲が湖面を覆うと皇円阿闍梨の姿が元の姿で昂然と現れた。次に法然が龍体を現してくれるように願うと突如風騒ぎ、波怒り、水数丈の高さに上り、見る間に黒雲のうちに火焔迸り二十余尋の龍蛇炬(たいまつ)のごとく舌を吐き、爛々たる眼を怒らし雲中高く踊った。法然始め弟子三人は余りの恐ろしさに身も魂も絶え入るほどおののいた。しかし、かくまで恐ろしき龍蛇に変じ給うも、みなこれ衆生のためである。末法の衆生は聖道自力の修行では容易に成仏はできぬ。桜ヶ池入定は無辺なる衆生を愍み給う阿闍梨の慈悲の行であった。龍蛇には三熱の苦があり、八万4千の鱗の一つ一つに虫が寄生し、日夜上人の皮肉を喰い破り、その苦痛に上人は耐えていました。法然の水晶の数珠により、八万4千の鱗がはらはらと木の葉が散るように落ち、龍蛇は嬉しげに全身を波打たせ、やがて雲と共にたちまち消えました。法然は、湖畔で阿弥陀経を念誦し、赤飯を池に献げます。そして皇円阿闍梨の石像を池畔に建て京に帰りました。以上がかいつまんで入定した皇円上人の後日談の伝説です。
おひつ納め案内板

桜ヶ池とおひつ納め

現在、桜ヶ池では特殊神事として秋の彼岸に御櫃祭が行われています。信者の氏子の中から選ばれた人達が十数人立ち泳ぎして北岸に至り、お櫃を水面に片手で泳ぎ、池の中央に出て順次池心にこれを沈め、龍神に供える行事です。起源は法然上人が皇円阿闍梨のため供養したことに始まります。かつてひとつは神社に、もう一つは皇円阿闍梨に二櫃のみ捧げられたが、後に数が増えていった。駿河では、先祖の御霊は皇円阿闍梨上人の説法を求めて、初盆には必ず桜ヶ池に集まると云われています。慶応四年五月、徳川慶喜は桜ヶ池を参拝され、扁額「池宮神社」を奉納されたそうです。
上人の碑

月影のいたらぬ里はなけれども ながむる人の心にぞすむ (法然上人 続千載集)
記念館内

最後に桜ヶ池が諏訪湖と通底しているという伝承があります。信濃・善行寺の阿闍梨池とも通底伝承があります。「神道大系神社編 諏訪」を読むと諏方【ママ】上宮七不思議に湖水神幸があります。「厳寒の時に三日三夜に及び大明神上宮の濱より下宮の濱に御わたりまして、佐久郡新海明神と會合し給う」との記載は、諏訪上宮の男神と下宮の女神との逢瀬の神事のように考えます。ホツマのみ天照大神の配偶神として瀬織津比咩神のご神名を見ます。通底伝説は同じ信仰集団がそこに居るとも考えられ、どなたかの後日の探求を期待します。

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Re: 泉光院も 

泉光院様もよく歩いておられますが、ヨリック様の行動範囲もすごいですね。

美しい写真と共にいつも楽しみにブログを見させて頂いています。

いつか、桜ヶ池のお櫃神事を見てみたいです。コメントありがとうございました。



泉光院も 

お櫃納めは泉光院も、そしてワタクシも見てきました。
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